Now Where's My Wine?

シドニー在住、現地法人でワインに従事するフロスト結子です。オーストラリアから楽しいワイン情報を発信します。

タグ:読書ノート

50D7882C-E7AE-4386-A8C1-2CD392BDC339_1_105_c

Honeybeeと同じ作者のヒット作、Jasper Jonesです。
映画化もされているミステリー小説で、
舞台はベトナム戦争の頃の西オーストラリアの田舎町。

14歳の本好きの少年チャーリーを真夜中に訪ねてきたのは、
アボリジニの年上の少年ジャスパー・ジョーンズ。
そんなに仲が良かったわけでもないのに、突然訪ねて来たわけは
助けて欲しい、そう言われてジャスパーと共に森の中へ入っていくと
そこにはローラという少女の首吊り死体が。
ローラはジャスパーの恋人だった。

「殺したのは僕じゃない」

アボリジニというだけで普段から町の人から疎まれているジャスパー、
このままだと大した調査もされないまま、自分が犯人にされる。
賢いチャーリーなら信じてくれる、助けてくれると思ったのでした。

ベトナム戦争中のオーストラリア、田舎の特に閉鎖的な町で
戦争、人種差別、貧困と混沌とした時代に人々がどんなふうに生きていたのかが繊細に描かれています。
ローラの死に関わっていたのは誰かはなんとなく予想がつくのですが
そこは最重要なポイントではない気がします。

精神的に追い込まれた人間の弱さとか醜いところとかを描く残酷な描写もあるけれど
そんな中でもちゃんと、傷ついた子供に正しいことを言う大人がいたり、という希望の光もあり
悲しいシーンが多い話ではあるけれど、いつも希望を持たせてくれる彼の描写が私は大好きです。
なんか書いていてまた泣けてきた・・・( ;  ; )ううっ。

クレイグ・シルビーの描く少年たちは本当に愛おしい。
キャラクターに真摯に愛情を注いで描く作者だなと思いました。


Jasper Jones
Silvey, Craig
Ember
2012-03-27








映画もすごく良くできていて、本をよく再現しているなと思いました。
トニ・コレット(アバウト・ア・ボーイのお母さん)や
ヒューゴ・ウィーヴィング(ロード・オブ・ザ・リングの王様役)など
オーストラリアの名優たちも出演しています。

ワインは西オーストラリア出身の作者と、舞台にちなみ
西オーストラリアのマーガレット・リヴァーの名ワイナリー
ヴァセ・フェリックスのスパークリングにしました。



今日も読んでくださって、ありがとうございます。

よろしければこちらも。
マラソンブログ
ランナーズハイ・イン・シドニー

「読んだよ~」の1クリックを。励みになります。
にほんブログ村 酒ブログ ワインへ
にほんブログ村




LINEの読者登録はコチラから。






先週からロックダウンに入りましたシドニーです。
仕事は再び完全在宅勤務になりました(←嫌い💦)。
一気に去年まで巻き戻った気分です。

さて、今日の読書ノートはThe Dictionary of Lost Words

D5A033F5-BC37-4917-9CE9-52DE495209FB_1_105_c

です。

イギリスはオックスフォードが舞台となっていますが
作者Pip Williamsはオーストラリア人の方です。


The Dictionary of Lost Words (English Edition)
Williams, Pip
Affirm Press
2020-03-31


時代は1901年、世界最初のオックスフォード英語辞典を制作するその舞台裏で
辞書に不掲載となった「ことば」を集めた少女、イズメイの一生を綴った物語です。

父親がオックスフォード辞典の作成に関わっていたことから
就学前からことばに興味を持ち始めます。
オックスフォードの辞書に掲載する言葉を選択、その意味を定義づける作業を横目で見ているうちに

言葉の中には辞書に採用されない、存在しないとされる、あるいは忘れられていく言葉が多くあると気づきはじめます。
当時は辞書に関する決定事項は、主に高学歴な男性だけが関わっていたため
女性しか使わない言葉、特に労働者しか使わないスラングのような言葉の多くは
辞書に載ることはなかったようです。でもこれらの言葉は確実に生きていて、存在しているのに。

イズメイは、こういった辞書に載らない言葉たちを集め続けます。
そして少女から大人へと成長する過程で離別、恋、戦争、結婚、そして仕事と
人生を歩んでいきます。
言葉に価値を見出し、一生を捧げた女性。

個人的にお話の中で、特にすごく重要な要素ではないけれど
とても印象に残ったアイテムがマデイラケーキ、とエスペラント語でした。

お話の中には、当時の英国で一般的であったであろう「マデイラ」というケーキがよく出てきます。
酒精強化ワインのマデイラを使ったケーキかと思いきや、
ケーキ自体は普通のスポンジケーキで
マデイラと一緒にサーブされたそうです。
美味しそうだなぁ。

この頃マデイラも上流階級ではよく飲まれていたお酒なのでしょうね。

バーベイトマデイラ スイート750ml
木下インターナショナル

マデイラが手元になかったので、お花っぽいロゼにしました。
花もよく出てくる、春らしい色彩の見えるお話でしたので。


そして、このお話の中にはエスペラント語という言葉が出てくるのですが
これは19世紀に開発された「国際共通語」です。
実用には結局至っていませんが

外大出身の私、実は大学に「エスペラント語」の講座があったんです。
たぶん、日本でもエスペラント語の授業がある大学なんて、1−2校だったと思うので
相当マニアックな授業であったかと・・・・私は受けてませんが。

今日も読んでくださって、ありがとうございます。

よろしければこちらも。
マラソンブログ
ランナーズハイ・イン・シドニー

「読んだよ~」の1クリックを。励みになります。
にほんブログ村 酒ブログ ワインへ
にほんブログ村




LINEの読者登録はコチラから。





もしもあの時こうしていたら、違う人生だったかもしれない。
誰しも一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
主人公は30代の女性、家族や友達とは疎遠、独身、子供もいない、失業し、飼っている猫まで死んだ。
何もかもうまくいかなくて、誰にも必要とされていないことに絶望し
ついに自殺を図る。

気がつくと「真夜中の図書館」にいた。
そこにいたのは小学校の図書館に居た司書の女性。
そしてこの図書館にあるたくさんの本は全て、「彼女がこれまで選んだかもしれなかった人生」だと言う。

もしあの時当時の恋人と結婚していたら
もしあの時親友と一緒にオーストラリアに行っていたら
もしあの時水泳をやめていなかったら

図書館の中にある本を選ぶことで、「かもしれなかった人生」をいくつも体験していく主人公。
どんな選択をしてどんな結果になったところで最終的には自分の人生は自分のもの。
そして、そこからどうするか。

ドラえもんの「もしもボックス」を思い出しました。


著者のマット・ヘイグは鬱に関する本をいくつか出していて
ご本人も鬱に苦しんでいた時期があったそうです。
人生何もかもうまくいかない時
半ばライフコーチのような本でした。
正直私にはちょっと説教くさいなーと思ったけど
もう少し若い時に読んだら、もっと心に響いたのかもしれません。
最後もこうなるだろなと言うのが予測しやすい展開だったように思います。


157F7303-77F0-4DF7-B649-E1DB842CD192_1_105_c
ワインは、優しい泡がいくつも立ち上り消えていくスパークリング・ワイン、Croserにしました。
20−25ドルという実に気軽なお値段なのですがちゃんと伝統方式のハイクオリティなスパークリング。

今日も読んでくださって、ありがとうございます。

よろしければこちらも。
マラソンブログ
ランナーズハイ・イン・シドニー

「読んだよ~」の1クリックを。励みになります。
にほんブログ村 酒ブログ ワインへ
にほんブログ村




LINEの読者登録はコチラから。


今週の読書ノートです。

688DD57A-2FA5-4D9F-97AE-F2621532927B_1_105_c

Where The Crawdads Sing
これは去年読んだ本の中でも特に印象に残った作品の一つ
場所は1960年代後半のノースカロライナ
まだ黒人差別が露骨に残る時代

6才で母親に置き去りにされ、兄も姉も出ていき
暴力を振るい働かない父と二人きり
村の人には「湿地の娘」と呼ばれ
煙たがられ蔑まれつつも
ほぼ放置子のようになりつつも
美しい大自然の中で一人強く生きてきたカイヤ。

カイヤが大人に成長したある日、村のある青年が不審死で見つかり、カイヤに疑いの目が向けられる。


Where the Crawdads Sing (English Edition)
Owens, Delia
Corsair
2018-11-08


ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ
早川書房
2020-03-05





美しい自然とカイヤの凛とした生き様が交差する
美しいサスペンス・ストーリーです。
彼女の描くスケッチが手にとるように美しく表現されています。

小さな村で疎まれ学校にもうまく馴染めず
それでも数人の親切な大人に愛され孤独の中でも賢く育っていくカイヤ。
少女から女性へと成長していくカイヤに訪れるロマンスとサスペンスに最後までずっとドキドキしっぱなしです。

ザリガニの鳴くところ、というのは表現で「人が誰も来ないような自然の中のずっとずっと奥」という意味らしいです。

日本でも本屋大賞翻訳小説部門を受賞したんですね😳

ワインはニュージーランドのバイオダイナミックの生産者
ピラミッド・ヴァレーのリースリングです。
ヴィンテージなんだったかは忘れちゃいましたが
結構熟成してました。
カイヤの描く絵を思わせる綺麗なラベルです。
今日も読んでくださって、ありがとうございます。

よろしければこちらも。
マラソンブログ
ランナーズハイ・イン・シドニー

「読んだよ~」の1クリックを。励みになります。
にほんブログ村 酒ブログ ワインへ
にほんブログ村




LINEの読者登録はコチラから。




ノーベル文学賞受賞者のカズオ・イシグロの最新作を読みました。

Klara and The Sun




ドライな文章の中に通常とは違う語彙の使い方がされていて
読者はストーリーを読み進める中でだんだんとその真意を理解していくという
Never Let Me Goとの共通点も見えたストーリーですが
背景はまた全然違っていて今回はAIのお話。

AIを子供の「ともだち」として購入する世界で生きている”AF(Artificial Friend)”のKlaraと
人間の少女で病弱なJosieの交流。
物語はAIのクララの目線で語られ
クララは見るもの全てをそのままに受け止め学習していく。

読んでいくうちに、あるいは読み終わったずっと後で段々と言葉の意味がわかり背筋が寒くなることもあり
カズオワールドの深さに引き込まれていきます。

それでもクララの優しさとピュアリティが
とても寒い冬の朝に見つけたひだまりのような希望と温かみがある気がしました。



ワインは冷たい空気の中でも温かく光るような
ビーチワースのフィアノを選びましたよ。
ジャスパーズ・ヒルのセカンドラベル?Lo Stesso Lo Stesso。
Klara and The Sun

クララとお日さま
カズオ イシグロ
早川書房
2021-03-02





今日も読んでくださって、ありがとうございます。

よろしければこちらも。
マラソンブログ
ランナーズハイ・イン・シドニー

「読んだよ~」の1クリックを。励みになります。
にほんブログ村 酒ブログ ワインへ
にほんブログ村




LINEの読者登録はコチラから。


↑このページのトップヘ