Now Where's My Wine?

シドニー在住、現地法人でワインに従事するフロスト結子です。オーストラリアから楽しいワイン情報を発信します。

カテゴリ: 読書ノート

今年は本をたくさん読もうと思って
昨年末から読んでいた本をまずは一冊読了しました。


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中東のことは本当にぼんやりとしか知らなくて全く無知だったのですが
極限の状態の中で人々が知識に飢え、国を建て直そうと
本に希望を見出し立ち上がろうとするストーリー。

もちろんノン・フィクションです。
内戦中のシリアの街ダラヤで人々が瓦礫の中から本を集めて作った秘密の図書館。

内戦中のシリアで住居は半壊し、食べ物もろくにない環境の中で
人々が本や教育を求めて命がけで作った図書館

学校にも行けなくなった子供達
食べ物を探しに行って銃弾に倒れた父親

学校でビスケットを半分こずつしか食べられない子供達
お友達に半分をあげることができない男の子を叱った先生が
その後その子は家でお腹をすかせている小さな妹のために、その半分を持ち帰ったのだと知る
お父さんが死んでしまって、小さな妹を自分が守らなきゃと思ってやったことだった
この下りは思い出してもまた、涙が出る。

赤ずきんのお話が大好きな12歳の女の子
学校と勉強が大好きなのに行けなくなって
お母さんと家に閉じこもっている日々。お母さんは字が読めない。
「大きくなったら何になりたいの?」との問いに
12歳の少女が「私には未来がない。多分もう直ぐ死ぬから」と絶望を語る。

2011年から内戦の続くシリアで
本の中にはfacebookやWhatsAppなど現代で私たちが使うアプリが登場する。
これらは全て2016年、ごく最近の出来事ということを思い知らされる。

この今の時代に学校に行けない子供達がいる。字が読めない大人がいる。
ろくに食べ物がない人たちがいる。
一番怖いのはそういう現実をちゃんと知らずに暮らしていたということ。

そんな極限の中で
体が食べ物を必要とするように
魂が本を求めていて
生きる活力にもなっている


辛い現実をたくさん突きつけられる本ですが
やっぱり本ってすごい力があるんだな、ということを改めて実感でき
また、中東の問題に1人の大人として目を向けるきっかけをくれた本でした。



読んでよかったです。

日本語訳も出ているようです。





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母が亡くなった今だからやっと聞ける。あなたは父にとって、なんだったのですか?
アンジェラ、あなたのお父さんにとって私はなんだったか、それはお父さんにしかわからない。だけれど、私にとってあなたのお父さんがどんな存在だったか、それは教えてあげられるわ。
ジュリア・ロバーツ主演で映画化されたEat, Play Love(邦題:食べて、祈って、恋をして)の著者
エリザベス・ギルバートの新作を読みました。

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表紙は違うけど同じ作品です。


City of Girls: The Sunday Times Bestseller (English Edition)
Elizabeth Gilbert
Bloomsbury Publishing
2019-06-04



舞台は1940年代のニューヨークの劇場。
大学を退学になり親から半ば追い出される形でニューヨーク・シティにやってきた19歳のヴィヴィアンが
裁縫の才能を発揮して伯母の経営する劇場で舞台衣装を作る仕事を始めるというところから物語がスタートします。

ヴィヴィアンが回想しながら「アンジェラ」という女性に自分の半生を手紙で綴るという形で物語が進んでいきます。
この物語は、冒頭のアンジェラの「あなたは私の父にとってなんだったのですか?」という問いに対し手の答え。
アンジェラが、そして彼女の父が誰なのかは、かなり後の方になるまでわかりません。

若くて世間知らずでヴァージンだったヴィヴィアンが、劇場裏という特殊な環境で色々な人物と関わっていきます。女優、男優、舞台のダイレクター、ダンサー、脚本家。

最初は若い頃のヴィヴィアンのナイーブさ、危うさに相当イライラしつつ
正直後半までちょっと平凡な話だなあと思いながら読んでいましたが
途中で伏線回収が急スピードで始まります。

アンジェラにお父さんの話をするためには、ヴィヴィアンの19歳から90歳までの壮大な人生の間にやってきては去って行った人々を、語らずにはいられなかった(という設定)。

女性同士の間に走る独特の緊張感も、そして愛情、家族の間に流れる独特の空気。
戦争があった時代を挟むのでその頃の描写に胸が痛くなりました。

ヴィヴィアンの作る舞台衣装やその後作るウェディングドレスの描写がとても美しく、そこも楽しめた要素の一つでした。
ニューヨーク、行ったことないですが、
やはりいろんな意味で多くな人にとって特別な場所なのだなあと感じます。

英語で小説やノンフィクションを読むのがだいぶ速くなってきました。
まだまだ遅いですが。
スラスラッともっといろんな本を読めるようになりたいです。これも来年の目標。

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最近は本の話ばかりが続いておりますが
今回はこの本を。


 
舞台はクリントン大統領政権下のアメリカ(90年代)。
オハイオ州クリーヴランド市の、富裕層の住む街シェイカー・ハイツという街を舞台にした物語で
主な登場人物は裕福な家庭の妻リチャードソン夫人とシングルマザーでアーティストのミアと
彼女らのそれぞれの子供たち。

過去に謎が多く不思議な魅力で人を惹きつけるどこかミステリアスなミアと、父親の名前も知らない高校生2年生の娘のパール。

街でも特に裕福で豪邸に住み、夫は弁護士。かつては大手新聞のジャーナリストを目指したものの、
家庭を優先し地元新聞に書くレポーターに落ち着いたリチャードソン夫人。絵に描いたような幸せを自覚し、親から受け継いだ家を移民やシングルマザーなどの「社会的に恵まれていない人」に貸し出すことで自己満足している独善的な性格。そして、彼女の高校生の4人の子供たち。
本当にとても対照的な2人。
2つの家族は一見親しくなったように見えつつも
リチャードソン夫人がミアに自宅での家政婦の仕事をオファーしたり
彼女の作品の写真を買ってあげるわよとか
独善的なのか分かってやっているのか、自分の方が立場が上よと露骨に誇示するようになってきます。
脚注)日本では今こういった行為を「マウンティング」と呼びますが、英語ではそれは「交尾」「性行為」を揶揄すると教わったので私は使いません。

ミアは別に作品が売れても売れなくても、自分と娘が最低限暮らしていければいいのよ〜と飄々としていますが
その奔放さも余裕も、リチャードソン夫人には気に食わなかったのでしょう。

ある時、リチャードソン夫人の友人夫妻が、消防署に捨てられた中国人の女の赤ちゃんを養子に迎え
生みの母であり、ミアの友人である中国人女性が名乗りを上げ
親権を主張したことから事態は急変します。地元は大騒ぎになり、裁判に発展。
友人に肩入れたしたリチャードソン夫人が、ミアの過去を探り始め・・・

著者はこのシェイカー・ハイツで生まれ育った中国系アメリカ人2世であるらしく
ただ彼女が白人社会の不理解に対してムカついてるとか思うところがあるかというよりは
ただ淡々と事実を描写している、といった印象を受けました。

アジア人の女児を育てるのに、白人の夫妻がふさわしいかと言うディベートが行われるシーンでは
言語や食事、それにおもちゃも、ウェスタンのものだと相手の弁護士が暗に批判したりするのですが
実際日本で育った日本の子供たちだって西洋人の姿形のお人形で遊んだりするんだけどな、と思ったり。


それから。果たしてミアの過去は、そしてその暴露は必要だったのかな?
つか、そんなこと、ある??まあ、フィクションなんだけどさ。

冒頭の火事を含め、極端な出来事がそこここで起きるけど
なんのために?と思うところも複数あり、若干消化不良でした。

あとアメリカが舞台のアメリカ人著書による本なので、アメリカ英語にあまりなじみのない私は
学校の授業をPeriod(オーストラリアでは授業はClass。Periodって聞いたら生理って思う)って言うんだ!とか、細かいところで「へえ〜」となっていました。


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トロイ戦争を捕虜、性奴隷となった女性の視点から描いた作品The Silence of Girlsを読みました。


無知なものでギリシャ神話にもトロイ戦争にも、全く予備知識がなく
話の流れをまずはググってから、背景を頭に入れてから読みました。

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主な登場人物
アキレウス:ギリシア神話に登場する英雄。父親は人間、母親は海の女神ティティス。美しく無敵の兵士。だが、育ってきた環境が複雑なこととその恵まれた容姿や才力のせいか大人になりきれていないところあり、マザコン。

ブリセウス:物語の語り手でトロイの美しい女王。トロイがギリシャに略奪されアキレウスの性奴隷となる。自らを含め周囲の女性達の残酷な環境を滔々と語る。

パトロクロス:アキレウスの右腕となる男で幼馴染。幼少時代に暗い過去あり。アキレウスが唯一心を許す存在。奴隷を含む誰にでも優しく聡明。本来は王の息子で身分は高いが振る舞いも謙虚。

アガメムノン:ギリシャの王でヘレンの夫メネラーオスの兄。傲慢な性格だが内心は臆病者。アキレウスとブリセウスをめぐり敵対する。特殊な性癖を持つ。

ヘレン:ブリセウスの姉でギリシャの女王だったがトロイの王子パリスに見初められ攫われる。トロイ戦争のきっかけとなる。

ヘクター:トロイの王子、パリスの兄。アキレウスと対峙する。

プライアム:トロイの王でパリスとヘクターの父。

とまあ、他にも多く出てきますが、メインの登場人物はこんな感じです。

トロイ戦争は実際に起きた戦争ですが、フィクションです。
神話とかもかなり織り交ぜた設定になっていますが、
それが誰かの頭の中で起きている幻想なのか、それとも実際に起きたことなのか
それは定かではありません。


メインのテーマはやはり戦争の背後で、感情のない、もののように扱われた女性達を描きつつも
こういったテーマの作品によくあるような、残酷な性暴力などの具体的すぎる描写などはあまりありません。
逆にただただ淡々と、滔々と、「これが戦争が起きたら起こることなのである」というような語り方がされていることで、その残酷さは十分に伝わるかと思います。

戦争という男性の目線から語られることの多い題材を
女性の視点から非常にドライに描くことで
また新たな側面を与えてくれる作品です。


同じ戦争を題材にした映画もありましたが
だいぶ印象の違う作品でした。

難しい題材で理解するのに時間もかかりました(2回読んだ)が、
読んでよかったと思える作品でした。


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読書日記続いています。
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この本は、オーストラリアに来たばかりの時にちょうど流行っていたのですが
その時には手に取ることはなく
最近になって、古本屋さんのほんだらけさんでたまたま日本語版を見つけて手に取ってみました。
それまで知りませんでしたが
著者のミレイユ・ジュリアーノさんはヴーヴ・クリコ・アメリカの女性CEO。
マダム・クリコ以来、ヴーヴ・クリコ初の女性役員だそうです。

感想ですが、思ったよりずっと良かった!
原作は英語で書かれていて、おそらくですが
アメリカ人女性に向けて書かれた本なのだと思います。

大学に入る前にアメリカに1年間留学した筆者が
ベーグルやブラウニーに出合ってしまい
1年であっという間に10kgも太ってしまい
帰国して再会したお父さんが、思わず口を滑らしてしまった言葉が

「まるで(市場にあるような)ジャガイモの袋みたいだ」

それににショックを受け、ダイエットに取り組んだところから書かれています。

◎質の良いものを知り、適度に食べること
◎食べ物の旬やハーブ、スパイスを知り楽しむこと
◎水をたくさん飲むこと
◎エレベーターではなく階段を使うこと

というような既に知っていることに加え

デザートもチーズもパンもパスタもワインもやめなくていい。
ただし機械的に出された分だけ食べるのではなく、食べ物に集中して、本当に必要なだけ食べること。

ダイエット本というよりは、より楽しく生きるヒントのようなものが
たくさん書かれています。
アメリカとフランスの女性の物事の捉え方の対比も面白かったです。
アメリカではダイエットは我慢、闘いのように捉えられているけれど
フランスでは食べる量を減らしたとしても喜びは増える、そんな食べ方をする。
食べて悪いものではなく良いものを考える。

あとはシャンパーニュの会社の方なので
やはりワインについての言及もあり個人的に興味深かったです。
さらには簡単でヘルシーなフレンチのレシピもたくさん入っていているのも嬉しいです。

翻訳は正直ちょっとイマイチでした。
同じ著者の別の本もあるので、機会があれば読んでみたいと思います。

 



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