Now Where's My Wine?

シドニー在住、ワインライター兼通訳のフロスト結子です。オーストラリアから楽しいワイン情報を発信します。

カテゴリ: 読書ノート

最近は本の話ばかりが続いておりますが
今回はこの本を。


 
舞台はクリントン大統領政権下のアメリカ(90年代)。
オハイオ州クリーヴランド市の、富裕層の住む街シェイカー・ハイツという街を舞台にした物語で
主な登場人物は裕福な家庭の妻リチャードソン夫人とシングルマザーでアーティストのミアと
彼女らのそれぞれの子供たち。

過去に謎が多く不思議な魅力で人を惹きつけるどこかミステリアスなミアと、父親の名前も知らない高校生2年生の娘のパール。

街でも特に裕福で豪邸に住み、夫は弁護士。かつては大手新聞のジャーナリストを目指したものの、
家庭を優先し地元新聞に書くレポーターに落ち着いたリチャードソン夫人。絵に描いたような幸せを自覚し、親から受け継いだ家を移民やシングルマザーなどの「社会的に恵まれていない人」に貸し出すことで自己満足している独善的な性格。そして、彼女の高校生の4人の子供たち。
本当にとても対照的な2人。
2つの家族は一見親しくなったように見えつつも
リチャードソン夫人がミアに自宅での家政婦の仕事をオファーしたり
彼女の作品の写真を買ってあげるわよとか
独善的なのか分かってやっているのか、自分の方が立場が上よと露骨に誇示するようになってきます。
脚注)日本では今こういった行為を「マウンティング」と呼びますが、英語ではそれは「交尾」「性行為」を揶揄すると教わったので私は使いません。

ミアは別に作品が売れても売れなくても、自分と娘が最低限暮らしていければいいのよ〜と飄々としていますが
その奔放さも余裕も、リチャードソン夫人には気に食わなかったのでしょう。

ある時、リチャードソン夫人の友人夫妻が、消防署に捨てられた中国人の女の赤ちゃんを養子に迎え
生みの母であり、ミアの友人である中国人女性が名乗りを上げ
親権を主張したことから事態は急変します。地元は大騒ぎになり、裁判に発展。
友人に肩入れたしたリチャードソン夫人が、ミアの過去を探り始め・・・

著者はこのシェイカー・ハイツで生まれ育った中国系アメリカ人2世であるらしく
ただ彼女が白人社会の不理解に対してムカついてるとか思うところがあるかというよりは
ただ淡々と事実を描写している、といった印象を受けました。

アジア人の女児を育てるのに、白人の夫妻がふさわしいかと言うディベートが行われるシーンでは
言語や食事、それにおもちゃも、ウェスタンのものだと相手の弁護士が暗に批判したりするのですが
実際日本で育った日本の子供たちだって西洋人の姿形のお人形で遊んだりするんだけどな、と思ったり。


それから。果たしてミアの過去は、そしてその暴露は必要だったのかな?
つか、そんなこと、ある??まあ、フィクションなんだけどさ。

冒頭の火事を含め、極端な出来事がそこここで起きるけど
なんのために?と思うところも複数あり、若干消化不良でした。

あとアメリカが舞台のアメリカ人著書による本なので、アメリカ英語にあまりなじみのない私は
学校の授業をPeriod(オーストラリアでは授業はClass。Periodって聞いたら生理って思う)って言うんだ!とか、細かいところで「へえ〜」となっていました。


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トロイ戦争を捕虜、性奴隷となった女性の視点から描いた作品The Silence of Girlsを読みました。


無知なものでギリシャ神話にもトロイ戦争にも、全く予備知識がなく
話の流れをまずはググってから、背景を頭に入れてから読みました。

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主な登場人物
アキレウス:ギリシア神話に登場する英雄。父親は人間、母親は海の女神ティティス。美しく無敵の兵士。だが、育ってきた環境が複雑なこととその恵まれた容姿や才力のせいか大人になりきれていないところあり、マザコン。

ブリセウス:物語の語り手でトロイの美しい女王。トロイがギリシャに略奪されアキレウスの性奴隷となる。自らを含め周囲の女性達の残酷な環境を滔々と語る。

パトロクロス:アキレウスの右腕となる男で幼馴染。幼少時代に暗い過去あり。アキレウスが唯一心を許す存在。奴隷を含む誰にでも優しく聡明。本来は王の息子で身分は高いが振る舞いも謙虚。

アガメムノン:ギリシャの王でヘレンの夫メネラーオスの兄。傲慢な性格だが内心は臆病者。アキレウスとブリセウスをめぐり敵対する。特殊な性癖を持つ。

ヘレン:ブリセウスの姉でギリシャの女王だったがトロイの王子パリスに見初められ攫われる。トロイ戦争のきっかけとなる。

ヘクター:トロイの王子、パリスの兄。アキレウスと対峙する。

プライアム:トロイの王でパリスとヘクターの父。

とまあ、他にも多く出てきますが、メインの登場人物はこんな感じです。

トロイ戦争は実際に起きた戦争ですが、フィクションです。
神話とかもかなり織り交ぜた設定になっていますが、
それが誰かの頭の中で起きている幻想なのか、それとも実際に起きたことなのか
それは定かではありません。


メインのテーマはやはり戦争の背後で、感情のない、もののように扱われた女性達を描きつつも
こういったテーマの作品によくあるような、残酷な性暴力などの具体的すぎる描写などはあまりありません。
逆にただただ淡々と、滔々と、「これが戦争が起きたら起こることなのである」というような語り方がされていることで、その残酷さは十分に伝わるかと思います。

戦争という男性の目線から語られることの多い題材を
女性の視点から非常にドライに描くことで
また新たな側面を与えてくれる作品です。


同じ戦争を題材にした映画もありましたが
だいぶ印象の違う作品でした。

難しい題材で理解するのに時間もかかりました(2回読んだ)が、
読んでよかったと思える作品でした。


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読書日記続いています。
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この本は、オーストラリアに来たばかりの時にちょうど流行っていたのですが
その時には手に取ることはなく
最近になって、古本屋さんのほんだらけさんでたまたま日本語版を見つけて手に取ってみました。
それまで知りませんでしたが
著者のミレイユ・ジュリアーノさんはヴーヴ・クリコ・アメリカの女性CEO。
マダム・クリコ以来、ヴーヴ・クリコ初の女性役員だそうです。

感想ですが、思ったよりずっと良かった!
原作は英語で書かれていて、おそらくですが
アメリカ人女性に向けて書かれた本なのだと思います。

大学に入る前にアメリカに1年間留学した筆者が
ベーグルやブラウニーに出合ってしまい
1年であっという間に10kgも太ってしまい
帰国して再会したお父さんが、思わず口を滑らしてしまった言葉が

「まるで(市場にあるような)ジャガイモの袋みたいだ」

それににショックを受け、ダイエットに取り組んだところから書かれています。

◎質の良いものを知り、適度に食べること
◎食べ物の旬やハーブ、スパイスを知り楽しむこと
◎水をたくさん飲むこと
◎エレベーターではなく階段を使うこと

というような既に知っていることに加え

デザートもチーズもパンもパスタもワインもやめなくていい。
ただし機械的に出された分だけ食べるのではなく、食べ物に集中して、本当に必要なだけ食べること。

ダイエット本というよりは、より楽しく生きるヒントのようなものが
たくさん書かれています。
アメリカとフランスの女性の物事の捉え方の対比も面白かったです。
アメリカではダイエットは我慢、闘いのように捉えられているけれど
フランスでは食べる量を減らしたとしても喜びは増える、そんな食べ方をする。
食べて悪いものではなく良いものを考える。

あとはシャンパーニュの会社の方なので
やはりワインについての言及もあり個人的に興味深かったです。
さらには簡単でヘルシーなフレンチのレシピもたくさん入っていているのも嬉しいです。

翻訳は正直ちょっとイマイチでした。
同じ著者の別の本もあるので、機会があれば読んでみたいと思います。

 



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1954年出版のこの本を、今まで知らずにいました。
シドニーではSydney Theatre Companyによる舞台が開演されるということで
観劇する前に、読んでみることにしました。
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ちなみにワインは金毘羅丸(Konpiramaru)のペット・ナットです。

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飛行機が無人島に不時着して少年達だけでなんとか生き残ろうとする中で、年長者の少年たちの間で対立が起き、やがて殺し合いにまで発展してしまう
という、平たく言えば設定としては「十五少年漂流記」みたいな感じですが
それよりももっと生々しい、人間の本質を問うようなストーリーです。

私が買ったペーパーバックには、スティーブン・キングが序文を寄せていて
スティーブン・キングが子供の時に、移動図書館のおばさんに
「児童書に出てくるような嘘くさい子供じゃなく、子供の本当の姿を描いた本を読みたい」
と言ったら、大人が読む本の中からこの本を取り出してくれたのだそうです。

極限に追い込まれた少年たちが
懸命に強く正しくあろうとする姿や、逆に狂気に走ってしまう姿がよく描かれています。
それぞれのキャラクターが担う「役」も鮮明に描かれていて
中心人物ラルフの孤独や悲しみが痛いほど伝わってきました。

ラルフは正しくあろうとする子だけど、本質はとても弱く繊細で
厳しい環境とプレッシャーの中でだんだんと壊れていく姿も
敵対するジャックに憎まれていると悟った時の彼の悲しみも
読んでいてとても辛かったです。

ジャックは野蛮族のリーダーになるキャラクターですが
本当は一番「普通」だったのかもしれません。
ティーンの少年として、考えなしで、無骨で、傲慢で。

ピギーはダメダメな子のようで、実は一番冷静で、理性として働く役割を果たすキャラクター。
一生懸命で、まっすぐで、冷静で。
いじめられっ子体質であっても、実は一番強かったのは、彼かもしれない。

英語で本を読んでいると
そのつもりはなくてもうっかり重要な箇所を読み飛ばしてしまったり
そのせいで話の流れが掴みにくかったりと
まだまだ難しいなと思うこともあるのですが
少しずつ、できる範囲で楽しんでいければいいなと思っています。
最後まで読んだのに、よくわからない部分があって
もう一度読み返したりとか
それも一つのプロセスですね。

8月にはこのストーリーを舞台で観る予定です。



蠅の王 (新潮文庫)
ウィリアム・ゴールディング
新潮社
1975-03-30





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読書会の課題図書のLessを読みました。
Less、というのは主人公Arthur Lessの名字から。

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サンフランシスコ在住50手前のゲイの小説家のアーサー・レスが
かつての愛人の結婚式に招待され
それを避けるために
海外の都市を転々と旅する物語。

ニューヨーク、メキシコ、イタリア、ドイツ、フランス、モロッコ、インド、日本と旅をするレス。
そう聞くとなかなかファビュラスな売れてる人気小説家なのかと思いきや
この旅の理由は、全部一応仕事なのだけど逐一色々変で、それが笑える。

このアーサーはただ自己評価がものすごく低いことが伺える描写がたくさんあるのですが
そこここで「あなたの小説大好きよ!」という女性が複数回登場したりもするので
ほんとはそんなに卑下するほど悪くもないんじゃないのかなぁと思いながら
人の目を気にして、何かを言われるのが嫌で元彼の結婚式に出られない。
かといって、正当な理由なく欠席する勇気もない。

そんな弱気な彼の旅を見守る物語。

ゆく先ゆく先で、ちくいち現れる過去の恋愛の影、古い友人、新たに出会う人びと。
もうちょっと堂々としていてよ、いい歳のオッサンなんだからと思うのですが
レスはいつもどこでも、なんだか気弱なんです。
実際にこんな友達がいたら、アンタしっかりしなよと背中を叩きたくもなりそうですが
今まで恋愛していた人々が、若々しいハンサム男であったり天才と呼ばれる詩人だったり
男性同士のカップルなんだけど、レスはどちらかというと「尽くす方」「身の回りの世話をする方」という女房役に徹していたからなのかもしれないです。
とにかくいつでもどこでも、誰にどう思われているかを常に気にしている様子。

ベトナムで彼が仕立てたブルーのスーツ。自信がない時にレスがまとう心の鎧のようなスーツ。
使うかどうかは別にして、どこにでも持っていくエクササイズ用の道具。
誰にもこんなカッコ悪い時もある、かな?

がっつりハマる本でもなかったけど時々「ニヤッ」としてしまうユーモアもあり、楽しめました。






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